輸出管理をするために外為法(外国為替及び外国貿易法)の勉強を始めると、その法律の複雑さに驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、そのように思われることはごく自然なことです。行政書士である私も、初めて外為法を読んだときにはその複雑さに愕然としました。
私たちが外為法を読んで愕然とする最大の理由は「本文内にある『政令』や『省令』が、一体どれを指しているのかがすぐに分からないから」です。
そして法律を生業としていない皆さんにとっては、「そもそも政令や省令って何?法律と何が違うの?」と疑問に思っている方も多いはずです。
外為法を実務で読み込むためには、「法律・政令・省令の違いと役割」を理解しておくことが非常に重要です。本記事では、初心者向けにこの法体系の仕組みを分かりやすく説明いたします。
法体系の基本ルール
政令と省令を理解するために、まずは日本の「法体系のピラミッド」を確認しましょう。

一番上にあるのが「憲法」で、次に「法律」がきます。憲法に反する法律は制定できないため、憲法が一番上にあるという関係性です。
外為法も法律にあたり当然憲法には反しません。
法律は国会で制定され、改正する場合にも衆議院や参議院で可決する必要があり国会の会期中に行う必要があります。
つまり法律は「改正するためのハードルが非常に高い」という特徴があります。
これを踏まえた上で、その下に位置する「政令」と「省令」について確認していきましょう。
政令とは?(内閣が定めるルール)
政令とは、法律で定めた大枠を、もう少し具体的にするために内閣が定める法規です。
行政機関が制定する法規を「命令」と呼びます。言い換えると政令は行政機関が制定する最上位の命令となります。
なぜ、国会ではなく内閣が定めるのでしょうか。
それは法律というものはあくまで抽象的な方針や大枠を定めているものだからです。
内閣は時代や情勢によって異なります。現実の政策や国際情勢に応じてルールを細かく設定してスピーディーに対応する必要があります。特に外為法など、国際情勢や最新技術によって変化が著しい分野は、法律のように「国会を開いて審議して…」という大変な改正プロセスを踏んでいては、変化に対応できません。
そこで、行政機関に「法律の委任の範囲内」で、内閣が具体的なルールを定める権限を与えているのです。
国会の審議は必要ありませんが、所管省庁が改正案を作り、内閣法制局で審査を受け、閣議決定等の改正プロセスは必要です。
閣議決定を経て定められるため、国レベルの基本ルールとなります。
省令とは?(各省大臣が定めるルール)
省令とは、政令のさらに下位に位置する命令です。
政令は内閣が定めましたが、省令は各省の大臣が定めます。外為法で言えば、経済産業大臣が該当することがほとんどでしょう。
先程、政令は「法律の範囲内で委任を受けて内閣が定める」と書きました。内閣は政府なので、情勢や実態に合わせて基本的なルールを定めることが重要な役割です。
しかし、現場の実務レベルで細かい運用ルールを定めるためには、より高度で専門的な知識が必要になります。内閣の定める基本的なルールである政令だけでは不十分になるため、さらに管轄の大臣が定める形で「省令」が存在しています。
省令は、国家行政組織法により「各省大臣は、法律・政令を実行するため、または法律・政令の特別の委任に基づいて、省令を発することができる」とされており、次の手順で発行されます。
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省庁内で改正案を作成
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内閣法制局との調整
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大臣決裁
省令は法律や政令と異なり、国会の会期中でなくても、閣議決定も不要で大臣が発令できるため、柔軟かつ迅速に改正できるのが最大の特徴です。
具体例:外為法で見てみよう
この階層構造を、実際の外為法の輸出管理に当てはめてみましょう。
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【法律(外為法)】
外為法の輸出管理の分野では「国際社会の平和と安全の維持を脅かすような貨物は、許可なく輸出してはいけない」という大枠の義務と禁止を定めています。
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【政令(輸出貿易管理令)】
では「どの貨物を輸出すると国際社会の平和と安全が脅かされるのか?」というリストを、国レベルで決めたのが政令である「輸出貿易管理令(輸出令)」です。
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【省令(貨物等省令)】
さらに「その貨物の細かなスペック(性能の基準)は具体的にどういったものか?」というマニアックな基準を、経済産業大臣が定めているのが「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令(通称:貨物等省令)」です。
まとめ
政令と省令の違いについて説明しました。
両方とも、「法律の方針を具体化するために行政機関が定める命令」です。
外為法が扱う安全保障の分野は、外国との足並みを調整したり、新技術が開発されたりすることで、今まで問題視されていなかったものが突然規制の対象になることが頻繁にあります。
そこで、変化の激しい国際情勢に即座に合わせられるよう、行政機関が法律の委任の範囲内で柔軟にルールを定められるシステム(階層構造)にしているため、全体像が複雑に感じてしまうのです。
今一度、ざっくりとまとめると以下のようになります。外為法を読み解く際のコンパスとしてご認識ください。
| 名称 | 誰が決めるか | 役割(ざっくり) |
| 法律 | 国会 | 基本ルール・大枠・大きな義務・禁止 |
| 政令 | 内閣 | 法律の「基本設計」を国レベルで補う |
| 省令 | 各省大臣 | 政令・法律の「現場での細かい運用ルール」 |
複雑な外為法も、この仕組みを理解しておくだけで、自分が今「どの階層のルールを読んでいるのか」が分かりやすくなります。
自社での判断が難しい場合や、輸出管理の体制構築に不安がある場合は、専門家である当事務所までお気軽にご相談ください。
| 免責事項
本記事は、公開されている法令や行政資料、制度説明をもとにした一般的な解説です。個別案件の該非判定や用途・需要者の確認、許可・承認の要否判断、法的助言の代替となるものではありません。実務対応の際は、必ず最新の法令・政令・省令・通達・Q&A・改正情報をご確認いただき、必要に応じて経済産業省、税関、社内専門部門、外部専門家へご相談ください。 |

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